フィメール・ポップスの新風 ―百花繚乱の歌姫たち(1974-79年)

1970年代後半のヒットチャートは「女性たちの歌声」によって彩られていた。60年代のガール・グループや、70年代初頭の告白的なシンガーソングライターの流れを汲みつつも、この時期の女性シンガーたちは、より洗練され、より自立した視点を持っていた。

リンダ・ロンシュタットはカントリーやロック、R&Bといったアメリカのルーツミュージックを、ポップ・サウンドへと磨き上げた。特に「悪いあなた』(1974)以降の彼女の快進撃は、リンダが単なるシンガーではなく、時代の空気を読み解くプロデューサー的感性の持ち主であったことを物語っている。

「You're No Good(悪いあなた)」Linda Ronstadt

リンダと並び、この時期に圧倒的な輝きを放ったのがオリビア・ニュートン=ジョンだ。彼女もまた、カントリー・テイストを漂わせた瑞々しいスタイルで登場し、映画『グリース』(1978)への出演などを経て、80年代には大ヒット曲「フィジカル」でダイナミックなシンガーへと進化を遂げた。

「Have You Never Been Mellow(そよ風の誘惑)」Olivia Newton-John

一方、カントリーとポップスの境界線を幻想的に描き出したのがクリスタル・ゲイルだった。「瞳のささやき」(1977)でのジャジーで洗練された空気感は、それまでのカントリーのイメージを一新した。

「Don't It Make My Brown Eyes Blue(瞳のささやき)」Crystal Gayle

また、幼くしてデビューしたタニア・タッカーも、従来のカントリーの枠を越え、ポップな表現へと歩みを進めていた。アメリカ本国での評価とはやや異なり、日本では「Hello, Mr. Sunshine」がCMソングとして親しまれ、彼女の名は広く浸透した。

「Hello, Mr. Sunshine」Tanya Tucker(作曲者“Mick Stewart”は、かまやつひろしの変名)

深い内省と静かな自立を歌った女性たちも多くの支持を得た。その筆頭がジャニス・イアンだ。「17才の時」(1975)で、彼女は華やかな世界から疎外された者の孤独を描いた。その視点は、煌びやかなポップスに熱狂する一方で、複雑な内面を抱える同時代のリスナーの心を癒した。

「At Seventeen(17才の時)」Janis Ian

メアリー・マクレガーの「過ぎし日の想い出」や、デビー・ブーンの「恋するデビー」など、等身大の女性の細やかな心理を素直に描いた曲も多くの共感を集めた。

「Torn Between Two Lovers(過ぎし日の想い出)」Mary MacGregor
「You Light Up My Life(恋するデビー)」DEBBY BOONE

1970年代後半に花開いた女性たちの歌声は、ジャンルの境界を横断しながら、ポップスの表現領域を着実に押し広げていった。その流れは、やがてより強い個性と視覚的イメージを伴った次の時代へと引き継がれていく。

そして、80年代にはマドンナ、シンディ・ローパー、ホイットニー・ヒューストン、ジャネット・ジャクソンといった面々が登場し、フィメール・ポップスはさらなる拡張期を迎えることになる。

…to be continued