…to be continued
プログレッシブ・ロック ― 空想と構築の黄金期(1967‐73年)
1960年代末、ロックは若者の反抗の象徴から「芸術」へと昇華しようとしていた。
その転換点となったのは1967年にビートルズが発表した『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』だった。アルバムという形式に総合芸術的な構想を持ち込んだこの作品は、のちのアーティストたちに新たな指針を示した。そして、その流れの中で登場したのが、クラシックやジャズ、文学、哲学までを含んだ「プログレッシブ・ロック」だった。
1967年にムーディー・ブルースが発表したアルバム『デイズ・オブ・フューチャー・パスト』は、オーケストラとロックの融合を試み、のちのプログレを予感させる作品となった。
また、1967年のプロコル・ハルム「青い影」、翌1968年にキース・エマーソン率いるナイスが発表した「アメリカ」は、いずれもクラシカルな要素をロックに導入し、プログレの胎動期を示していた。
特に、ナイスの「アメリカ」は、レナード・バーンスタインのミュージカル「ウエスト・サイド物語」の楽曲を大胆にアレンジしたもので、後のプログレに通じる構築性、演奏技術の先駆となった。
翌年、キング・クリムゾンの『クリムゾン・キングの宮殿』が登場し、「21世紀のスキッツォイド・マン」の衝撃は、プログレの重要な原点として歴史に刻まれる。
1970年代初頭、ピンク・フロイドは『原子心母』(1970)で壮大な組曲を展開し、『おせっかい』(1971)の「エコーズ」では叙情と実験性を兼ね備えたサウンドを提示。『狂気』(1973)でコンセプト・アルバムとしての形式を完成させた。
イエスは『ザ・イエス・アルバム』(1971)でバンド・サウンドを確立し、『こわれもの』を経て『危機』(1972)でA面を一曲に費やす構成美を極めた。
一方、エマーソン・レイク&パーマー(ELP)はクラシックを大胆にロック化し、『タルカス』(1971)では進化と戦いを荘厳なサウンドで描いた。
ジェネシスはピーター・ガブリエルの演劇的パフォーマンスと幻想的世界観で異彩を放ち、『フォックストロット』(1972)や『月影の騎士』(1973)で、音楽と物語を融合させた。
1970〜73年は、プログレッシブ・ロックが最も創造的で多様に発展した時代であり、74年以降、バンドの分裂や方向転換を経て、その勢いはゆるやかに沈静化していく。
しかし、デヴィッド・ボウイ、ロキシー・ミュージック、ケイト・ブッシュといったアーティストたちは、プログレが築いた実験性や幻想的・演劇的な表現、論理的で緻密な構成といった要素を独自のポップ・センスと結びつけ、70年代後半のアートロックを形成した。そして、その潮流はやがて80年代以降のニューウェイヴやオルタナティヴ・サウンドへと発展していくことになる。