2017年:CD文化から配信時代へ
2017年は、従来のCD売上中心型と、ネットでの普及によるヒットが混在する「過渡期」とも言える年だった。依然としてCDの販売力は健在だったが、AKB48が「会いに行けるアイドル」として、握手会や総選挙といった“リアル参加型”の仕組みで人気を拡大していく――そうした時代は少しずつ遠ざかっていた。
SNSやYouTubeの浸透によって、アイドルとファンの関係性も徐々に変化していた。メンバーが自分たちの日常や素顔を発信し、ファンが投稿を通じて親しみを感じる――“日常的なつながり”が共感を生むようになっていた。乃木坂46や欅坂46が多くの支持を集める背景にあったのは、まさにそんな新しい関係性だ。こうしたところにも、ネット文化によるJ-POP界の変化が現れつつあった。
音楽の聴き方にも、少しずつ変化の波が押し寄せていた。前年に日本へ上陸したSpotifyを皮切りに、LINE MUSICやApple Musicといったストリーミングサービスが広がり、スマホを通じて音楽を聴くスタイルが若い世代を中心に定着しはじめていた。
そんな時代の空気を映し出すように、2017年にはネット文化が生んだ象徴的なヒットがいくつも生まれた。その代表が、DAOKO×米津玄師の「打上花火」と、WANIMAの「ともに」だろう。
打上花火は映画主題歌として映像美と切ない青春感が、WANIMAはライブの様子が、それぞれSNSやYouTubeで拡散され、広く共感を呼んだ。両者に共通するのは、テレビ露出よりもネット経由で共感が広まり、ファン主体の口コミがヒットを支えた点だ。
また、あいみょんが新世代シンガーソングライターとして広く知られるきっかけとなった「君はロックを聴かない」は、ドラマやCMといったタイアップに頼らず、SNSやYouTubeでの共感の連鎖によって支持を広げた。
ストリーミングやカラオケでも長く愛され続けるこの曲は、デジタル時代においてもなお、「想いを伝えられないもどかしさ」や「近くにいながら分かり合えない孤独」といった感情が決して古びないことを示している。
2017年は、CDを中心とした音楽産業が、まだ一定の存在感を保っていた。しかし、その一方で、ストリーミングやSNSを通じた新しい音楽の聴かれ方が浸透し始めた年でもあった。この後、J-POPは次第に配信中心の時代へ移行していくことになる。次回は2016年にさかのぼり、音楽配信が芽吹いた頃のJ-POP界をふり返ってみたい。