2023年:「物語」と共に広がる音楽

2023年のJ-POPシーンを振り返ると、まず浮かび上がるのは「物語性」との結びつきの強さだろう。アニメや映画、ドラマといった物語世界と共鳴しながらリスナーに届く──これは、1980年代、90年代に盛んになったタイアップ、メディアミックスの延長線上にあるものだが、そこにネット文化が大きく関わっている点が現代的だ。

代表的なヒット曲としてはYOASOBI「アイドル」が挙げられる。大ヒットアニメ【推しの子】のオープニングテーマとして生まれたこの曲は、作品のテーマと歌詞が見事に絡み合い、国内外のチャートを席巻した。YouTubeやTikTokでの爆発的拡散が後押ししたという点でも「2023年を象徴する曲」と言えるだろう。

YOASOBI「アイドル」(アニメ【推しの子】オープニングテーマ)

他にも、TVドラマの主題歌となったOfficial髭男dism「TATTOO」や、藤井風「花」なども、物語と楽曲が響き合うことで人気を集め、配信を含めて大きな話題となった。

「TATTOO」Official髭男dism(TVドラマ「ペンディングトレイン」主題歌)
「花」藤井風(TVドラマ「いちばんすきな花」主題歌)

現代の「映像作品を起点に音楽が広がる」ヒットの背景には、SNSと動画配信の存在が大きく関わっている。TikTokをはじめとする短尺動画プラットフォームでは、作品のワンシーンと楽曲のサビが切り取られて拡散される現象が常態化した。

音楽をフルで聴く前に、その一部を映像と共に知る──80年代、90年代のメディアミックスでも、TVドラマやCMなどを通じて同様の現象は多々あったが、現代は、リスナーがスマホなどを通じて、いつでもどこでも気軽に、自分の選択で繰り返し視聴できる、という点が大きく異なっている。

また、この年には、大型フェスやアリーナ公演が本格的に再開され、観客の熱気が戻ってきた。その一方で、コロナ禍で発展したネット配信ライブのノウハウも応用された。 公演を生配信したり、SNSを通じてリアルタイムに観客とつながるなど、オンラインとオフラインが補完し合う形が定着。現場に足を運ぶ人々だけでなく、遠隔地や海外のファンも一体感を共有できる仕組みが整ったのは、コロナ禍を経た音楽文化の大きな成果だろう。

こうして2023年の音楽は、映像による「物語性」、SNSなどによる「拡散力」と結びつきながら、多様な聴き手へと浸透した。次回は2022年へとさかのぼり、この潮流がいかに芽吹き始めたのかを探っていきたい。

…to be continued