2024年:バーチャルシンガーとリアル復活の交差点

2024年の音楽シーンを振り返ると、最も象徴的だったのはバーチャルシンガーの台頭と、リアルライブの復活が同時に進んだ点だ。

バーチャルシンガーとは、キャラクターとして歌唱を行う存在である。従来のボーカロイドが「音声合成ソフト」としての側面が強かったのに対し、バーチャルシンガーはライブや映像に登場する際、表情や動き、物語を伴って表現される。歌声そのものは人間の声をベースにAIが加工・補正するハイブリッドが主流で、音程や息遣い、感情を繊細に再現することで、従来にない「キャラクターが生きて歌っている」感覚を生み出している。

V.W.Pの「切札」はその代表例だ。AIによる歌声補正がキャラクターの感情表現と結びつき、物語性のあるステージ演出と一体化することで、新しい音楽体験を提供した。さらにライブ「現象Ⅱ -魔女拡成-」では、コメントやリアクションを通じて観客が演出に加わる仕組みが導入され、スクリーン越しにも関わらず強い一体感を生んだ。

「切札」V.W.P

一方で、リアルの音楽シーンも復活を遂げていた。サマーソニックやロック・イン・ジャパンといった大型フェスは制限付きながら開催され、久々に大規模な観客の熱気が戻った。小規模ライブハウスや地域フェスでも観客の動きが活発化し、仙台の定禅寺ストリートジャズフェスティバルのように街と音楽が結びついたイベントが力強く続いた。

これらの場では、コロナ禍で発展した配信ライブのノウハウも応用され、会場に来られないファンがコメントや投票で関与できる仕組みが定着した。

また、ヒット曲もネット文化との相互作用で拡散したものが目立った。Creepy Nutsの「Bling-Bang-Bang-Born」は、TVアニメ「マッシュル-MASHLE-」のオープニングテーマとして注目され、楽曲の中毒性とSNSでのダンスチャレンジの流行が相まって幅広い世代から支持を得た。

「Bling-Bang-Bang-Born」Creepy Nuts

Omoinotakeの「幾億光年」は、TBS系ドラマ「Eye Love You」の主題歌として話題となり、感動的な歌詞とメロディが多くのリスナーの共感を呼び、配信再生数を押し上げた。

「幾億光年」Omoinotake

tuki.の「晩餐歌」は、15歳の中学生シンガーによる瑞々しい歌声と爽やかなアレンジが話題となり、SNSでカバーやリアクション動画が拡散されて注目を集めた。

「晩餐歌」tuki.

ベテラン勢も存在感を発揮する上でネットを活用している。桑田佳祐やサザンオールスターズはツアーやオンライン配信でファンを集め、宇多田ヒカルも過去曲のストリーミング展開でデジタル世代との接点を作った。

こうして2024年は、デジタルとリアル、都市と地域、若手とベテランが交錯する多彩な音楽体験が同時進行した年だった。次回は、デジタル空間でのキャラクターと音楽の交わりが、初めて具体的な形を見せた2023年の動きを辿ってみたい。

...to be continued