2022年:「楽曲・映像×SNS」というヒット構造の萌芽

2022年、SEKAI NO OWARI「Habit」、Aimer「残響散歌」などが、映像と楽曲の強いリンクにSNSの拡散力が加わることで大ヒットを記録した。こうした「楽曲・映像×SNS」というヒット構造は、2023年以降のJ-POPを方向づける潮流となっていく。

「Habit」SEKAI NO OWARI(映画「ホリック xxxHOLiC」主題歌)
「残響散歌」Aimer(TVアニメ「鬼滅の刃」遊郭編オープニングテーマ)

また、この年、「恋風邪にのせて」などで注目を集めたVaundyのセルフプロデュース型スタイルは、J-POPの系譜を継ぐものだ。 70年代の細野晴臣や大瀧詠一が示したアルバム設計の思想、80年代のYMOや桑田佳祐による音楽と映像の融合、90年代の小室哲哉が確立した総合プロデュース、さらに椎名林檎や宇多田ヒカルのセルフ演出、米津玄師のネット発マルチ表現。 そうした流れを受け継ぎながら、VaundyはYouTubeやストリーミング、SNSといったネット文化の中で育った世代らしい方法で、音楽・映像・デザインを横断的に自己演出している。デジタル環境を前提に作品を設計し、リスナーが共有・拡散する構造を自然に組み込むその感性によって、彼はポップの中心へと躍り出た。

「恋風邪にのせて」Vaundy  ABEMA「彼とオオカミちゃんには騙されない」主題歌
一方、サザンオールスターズや浜田省吾、小田和正といったベテラン勢も、ライブ配信などのネット文化を積極的に取り入れ、リアルとデジタルの両面で活動を展開した。さらに松任谷由実は、AI技術を活用して「荒井由実」時代の声と現在の声をミックスした楽曲を制作するなど、世代を超えて多くのミュージシャンが最新技術を取り入れた創作に挑んでいる。
「Call me back」松任谷由実with 荒井由実

こうして2022年は、物語・音楽のリンクとSNSによる拡散、配信ライブの成熟、新世代の台頭、ベテラン勢による最新技術を駆使した活動などが交錯し、多層的な音楽文化の地盤が築かれた。次回は、J-POPとネット文化が強く結びつく萌芽となった2021年、コロナ禍の音楽状況を中心に振り返ってみたい。

To Be Continued...