1998年:ミリオンの頂点、J-POP新時代の幕開け

この年、CDシングルの年間売上は史上最高水準に達し、ヒットチャート上位には数多くのミリオンセラーが並んだ。音楽ソフトの総売上は約5,880億円(日本レコード協会データ)に達し、J-POPが最も広く支持を集め、社会全体を動かした頂点の年だった。

1997年、安室奈美恵「CAN YOU CELEBRATE?」が社会現象と呼べるほどのヒットとなり、小室サウンドは頂点を迎えた。そして翌1998年、globe「wanna Be A Dreammaker」が日本レコード大賞を受賞。小室哲哉プロデュース作品としての栄華を象徴する一曲となり、ブームは次の時代へと移行し始めた。

「wanna Be A Dreammaker」globe

「Time goes by」などをヒットさせたEvery Little Thingは、小室サウンドを受け継いだ"ポスト小室"世代の代表だった。しかし、この年を境に、そのブームはゆるやかに終わりへと向かい始めていく。

「Time goes by」Every Little Thing

この年は、女性アーティストの躍進が目覚ましかった。SPEEDは「my graduation」「ALIVE」で青春の象徴となり、Kiroro「長い間」が日常の温もりを描くナチュラルなポップとして多くの共感を呼んだ。派手な時代の中で、静かな強さと優しさを持つ音楽が再び注目され始めていた。

「my graduation」SPEED
「長い間」Kiroro

また、この年にデビューした浜崎あゆみも注目を集めた。デビューシングル「poker face」は大ヒットに至らなかったものの「Trust」「For My Dear…」を経て翌1999年の爆発的ブレイクへとつながっていく。

「poker face」浜崎あゆみ

さらにMISIA「つつみ込むように…」の登場は、J-POPに新しい方向性をもたらした。ソウルやR&Bを基調とした深みのある歌唱は、従来のJ-POPとは異なる新しい表現の可能性を示し、翌年の宇多田ヒカル登場へと続く新しいポップスの潮流が芽吹いていた。

「つつみ込むように…」MISIA

GLAYやL'Arc〜en〜Ciel、LUNA SEAといった男性ロックバンドも健在で、街に流れるヒット曲は世代を問わず共感を呼んだ。

「誘惑」GLAY
「HONEY」L'Arc〜en〜Ciel
「I for You」LUNA SEA(TVドラマ「神様、もう少しだけ」主題歌)

1998年は、音楽がテレビと街と人をつないでいた最後の季節だったとも言えるだろう。CDの売上は最高潮を記録し、ヒット曲は街角のBGMとして共有された。だが、その裏では、インターネットや携帯電話が急速に普及しつつあり、音楽の届き方が少しずつ変わり始めていた。"みんなが同じ曲を聴いていた時代"は、静かに幕を下ろそうとしていたのだった。

次回は、時代をさらにさかのぼり1997年へ。小室ブームの隆盛、多くの共感を得た女性ボーカルやバンドサウンドの成熟など、J-POPが"黄金期"へと駆け上がった経緯をたどる。

…to be continued