2002年:「ミリオンセラー時代」の曲がり角

2002年のJ-POPは、長く続いた「ミリオンセラー時代」が静かに終わりへ向かいはじめた年だった。

90年代後半、浜崎あゆみ、宇多田ヒカル、GLAY、Mr.Childrenが次々と100万枚を超えるヒットを飛ばし、音楽は社会そのものを動かすほどの力を持っていた。けれどその勢いに陰りが訪れる。2002年のオリコン年間シングル1位は浜崎あゆみの「H」(「independent」(「THE BASEBALL 2002」イメージソング)「July 1st」「HANABI」収録のシングル)で売り上げは約100万枚。続く宇多田ヒカル「traveling」が約86万枚、元ちとせ「ワダツミの木」が約84万枚と、上位でもミリオン到達は「H」だけだった。

independent / 浜崎あゆみ(「H」収録)
traveling / 宇多田ヒカル
ワダツミの木 / 元ちとせ

"100万枚"という数字は、もはや特別なものになっていた。かつていくつもあった大ヒットが、この頃から少しずつ姿を消していく。音楽ソフトの売上はピークを過ぎ、リスナーの関心が"買う"ことから"どう聴くか""何を感じるか"へ、ゆっくり移っていったとも言えるだろう。CDを棚に並べるより、パソコンで音楽に触れる機会が増えていった頃だ。

ヒットの形も変わりはじめた。宇多田ヒカルのアルバム「Deep River」(約352万枚)は、派手さよりも心の奥を見つめるような作品として支持を集めた。平井堅の「大きな古時計」や、中島美嘉の「WILL」も、聴く人の心に静かに寄り添う"共感の歌"として広がっていった。リスナーが求めたのは、カリスマ的なスターより、自分とつながる身近な歌だったのかもしれない。

大きな古時計 / 平井堅
WILL / 中島美嘉

アイドルシーンにも変化の兆しがあった。モーニング娘。は「そうだ!We're ALIVE」「Do it! Now」で1位を飾りながらも、社会現象のような熱狂は落ち着きを見せ、ファン層が固定化しつつあった。その一方で、w-inds.が「Another Days」「Because of you」などで新しい男性アイドル像を示し、EXILEも「Fly Away」などでR&Bを基調にしたダンスサウンドを打ち出していた。

そうだ!We're ALIVE / モーニング娘。
Another Days / w-inds.
Fly Away / EXILE

"ミリオン"が日常の数字ではなくなったこの年、J-POPはマスの熱狂から個の共感へ、静かに舵を切った。ヒット曲の数は減っても、リスナーの関心が薄れたというわけではなく、音楽の聴かれ方は多様化していった。

次回は、ミリオンセラーがまだ当たり前だった2001年へとさかのぼり、その変化の兆しを探ってみたい。

…to be continued