2003年:ヒットの多様化、細分化

2003年のJ-POPは、テレビドラマや大型タイアップを軸にした"誰もが同じ曲を聴く"時代の終わりを告げ、新しい聴き方への橋渡しとなる時期だった。

CDの総売上はついに2億枚を割り込み、ミリオンヒットは柴咲コウ(RUI)「月のしずく」やSMAP「世界に一つだけの花」などごくわずか。かつてのように「街に同じメロディが流れる」ことが減り、ヒットは細分化し始めた。だが同時に、多彩な曲が生まれた年でもあった。

月のしずく / 柴咲コウ(RUI)
世界に一つだけの花 / SMAP

森山直太朗「さくら(独唱)」や一青窈「もらい泣き」は、派手なサウンドよりも言葉の繊細さで人々の心をつかんだ。また、Mr.Children「くるみ/掌」は、生きづらさや迷いをまっすぐ見つめ、「孤独を抱えながらも誰かとのつながりを求める」――そんな2000年代初頭の若者の実感を映していた。これらの曲に共通するのは、"共感"と"内省"を軸にした静かな力強さだ。

さくら(独唱) / 森山直太朗
もらい泣き / 一青窈
くるみ/掌 / Mr.Children

一方で、ORANGE RANGE「上海ハニー」やケツメイシ「夏の思い出」といった軽快なナンバーも台頭。沖縄発のバンドやストリート出身グループが注目を集め、自由で開放的な感覚が閉塞感を打ち破るように受け入れられた。

上海ハニー / ORANGE RANGE
夏の思い出 / ケツメイシ

「深く考える歌」と「気楽に楽しむ歌」が共存したのが、2003年の大きな特徴だと言えるかもしれない。そして、この年は、携帯電話の着メロ文化が成熟し、翌年の「着うた」本格化へとつながる転換期でもあった。音楽の聴かれ方が、少しずつCDからデジタルへと移行し始めていた。

CD市場の減速、新世代アーティストの台頭、そしてデジタル時代への助走。2003年は、J-POPが"みんなの歌"から"それぞれの歌"へと歩みを進めた年だった。

次回は2002年にさかのぼり、CD市場の大きな変化を深掘りしてみたい。

…to be continued