…to be continued
2004年:着うた時代の幕開け
2004年は、携帯電話を通じた音楽配信が急速に拡大し、J-POPの受け手とアーティストの関係が大きく変わった年だった。
当時の市場規模については正確な統計が一律には残っていないが、2004年前後のモバイル音楽配信(着うた・着うたフルを含む)市場は、数十億円から数百億円規模へと急速に拡大したと推定されている。前年度から数倍の成長を遂げたことは確かで、携帯電話が音楽流通の新たな基盤として急浮上した。
これを機に、リスナーは気に入ったフレーズ、特にサビの印象的な瞬間を携帯に保存し、着信音として日常的に楽しむようになる。そうした変化に応じ、アーティストやレコード会社は、短時間で耳をつかむ構成を意識し始めた。
ORANGE RANGEの「ロコローション」や大塚愛の「さくらんぼ」は、そのキャッチーなサビが着うたとして広まりやすく、平井堅の「瞳をとじて」も映画主題歌としての共感と相まって、サビだけで曲全体のイメージを呼び起こした。
音楽のジャンルも多様化し、R&B、ロック、ヒップホップ、ポップがチャート上で共存、幅広い層に浸透した。AI、DOUBLE、BoAの都会的で洗練されたサウンドや、ORANGE RANGE、HYの沖縄らしい明るく開放的なサウンドが多くのリスナーに親しまれた。
ヒップホップではKICK THE CAN CREWの活動休止後、RIP SLYME「楽園ベイベー」やHOME MADE 家族「サンキュー!!」がポップフィールドに浸透し、ラップがより身近な表現となった。
そして、2004年11月、KDDIなどの携帯キャリアが「着うたフル」サービスを開始。部分的な着うたに加え、楽曲全体を携帯で楽しめるようになったことで、モバイル音楽市場はさらに拡大し、アーティストの収益構造やプロモーション戦略にも新たな影響を与えることとなった。
同時に、インターネット上での個人発信も微妙に影響を及ぼし始めていた。掲示板やブログでの感想が広がり、ヒット曲をめぐる共感がオンラインで循環するようになっていく。こうして、2004年は、CDが依然として主流だったものの、曲の内容は、よりパーソナルで、リスナーが身近に感じられるものへと変化していった。
次回は2003年にさかのぼり、J-POPがデジタル時代への助走をしていた様子を探っていく。