2006年: “泣き歌”の幕が上がった年

2006年のJ-POPは、翌年以降に巻き起こる“泣き歌ブーム”の前夜だった。市場ではCD売上が低迷する一方、携帯電話を通じた着うた・着うたフル配信の制度化・普及が2005年に始まり、2006年にかけて爆発的に拡大。音楽が「部屋で聴くもの」から「手のひらで共有するもの」へと変わる転換点にあった。そんな環境の変化と歩調を合わせるように、J-POPは“共感”と“切なさ”を核としたバラード志向を強めていく。

象徴的なのが、2005年末から翌年にかけてロングヒットしたレミオロメンの「粉雪」と、同年の絢香「三日月」だ。どちらもテレビドラマ──前者は「1リットルの涙」、後者は「サプリ」──とのタイアップを通じて、若者たちの心に深く沁み込んでいった。恋や別れを静かに描きながら、サビで感情を解き放つ構成は “泣き歌”の基本形そのものだ。

「粉雪」レミオロメン
「三日月」絢香

さらに、伊藤由奈「Precious」や、2005年末に発表され翌年にかけて息長くヒットしたコブクロ「桜」など、ストレートな愛情表現をもつミディアムテンポのバラードも相次いで登場した。これらの曲はCDセールス以上に、携帯配信ランキングで長く支持を集めたことが特徴的だった。

「Precious」伊藤由奈(映画「LIMIT OF LOVE 海猿」主題歌)
「桜」コブクロ

ロックシーンではUVERworld「君の好きなうた」や、2005年末リリースながら翌年も広く支持されたBUMP OF CHICKEN「supernova」などが、疾走感と叙情を併せ持つサウンドで共感を呼んだ。こうした曲も、かつての反骨よりは内面へのまなざしを強くし、「誰かに届く歌」へと変質しつつあった。

「君の好きなうた」UVERworld
「supernova」BUMP OF CHICKEN

この年のチャートを見渡すと、派手さよりも“心に沁みる”という言葉が似合う楽曲が並ぶ。絢香、伊藤由奈、YUI、スキマスイッチ、レミオロメン――2006年のヒット曲群は、単なる恋愛ソングではなく、「誰かを想う痛みや距離」をメロディに刻んだものだったと言えるだろう。

この“痛みを抱きしめる歌”の流れが、翌年以降、青山テルマ「そばにいるね」やHY「366日」、GReeeeN「愛唄」などへと受け継がれていく。2006年は、携帯電話を介して音楽が“個人の感情表現”の場になり始めた時代であり、J-POPが“泣き歌”という共感の形を見出す助走期間だった。

次回はCD中心時代の終焉に繋がる起点となった2005年の出来事を探ってみたい。

To Be Continued...