2007年:CD中心のヒットから配信主導型ヒットへ
2007年のJ-POP界は、長く続いたCD中心のヒット構造が揺らぎ始め、配信という新しい聴取形態が勢いを増す「移行期」にあたる年だった。翌2008年には青山テルマ feat. SoulJa「そばにいるね」のような配信数百万件規模のヒットが登場し、完全に“配信主導”の時代へと進むことになるが、2007年はまだCDと配信が拮抗する過渡期だった。
この年のJ-POP界を象徴するヒット曲は秋川雅史「千の風になって」だろう。クラシック寄りの声楽的歌唱と叙情的なメロディで歌われるこの曲は、ドラマや映画のタイアップなしで年間チャート1位を獲得。家族や死生観という普遍的テーマが幅広い世代に共感を呼び、CDだけでミリオンセラーを達成した。
一方で、テレビドラマ「花より男子2(リターンズ)」の主題歌・嵐「Love so sweet」と挿入歌・宇多田ヒカル「Flavor Of Life」が異例の大ヒットを記録。同時期に放送されたドラマ「東京タワー ~オカンとボクと、時々、オトン~」の主題歌であるコブクロ「蕾」もロングセラーとなり、いずれもCDと「着うたフル」配信の双方で成功を収めた。特に宇多田の「Flavor Of Life」は配信ミリオンを突破し、音楽の聴かれ方が確実に変わり始めていたことを示している。
音楽的にもこの年は、王道ポップスと並んでジャンルの多様化が進行した。宇多田ヒカルや加藤ミリヤ、AIは、R&Bやクラブサウンドを取り込み、J-POPに都市的なグルーヴをもたらした。安室奈美恵も翌年にかけて同路線で再浮上の兆しを見せ、再評価の機運を高めていった。 さらにPerfumeが「ポリリズム」でブレイクし、テクノポップ×アイドルという新しいスタイルを提示。中田ヤスタカのエレクトロサウンドが台頭し、以後のポップシーンを刷新する契機となった。
また、RIP SLYMEやKREVA、SEAMOといったラッパーがチャートに定着し、確かな存在感を放った。クラブ発のヒップホップが、テレビやCMを通じて日常のサウンドトラックに溶け込んでいく――そんな時代への移行が、この年にはっきりと見えていた。
2007年は、CD販売が減少を続けるなかで、着うたや配信によって楽曲が拡散し、聴き手が自由にジャンルを選び取る時代が始まっていた。CD中心の時代が終焉に近づく気配と、配信を通じた新しいヒットの兆しが同居した1年だった。
また、この前年からJ-POP界には、あるブームが発生していた。次回は2006年にさかのぼり、そのブームの内容と、広まった要因を探ってみたい。