2008年:リーマン・ショックが変えた音楽のかたち
2008年秋、リーマン・ショックが世界経済を直撃した。音楽業界もその影響を免れず、消費行動の変化が、音楽の聴かれ方を大きく変えた。すでにCD市場は縮小傾向にあったが、不況がそれを決定的にした。
この頃から、人々は「音楽をモノとして買う」ことから離れ、より安価で手軽な“アクセス”へと向かっていった。iTunesや「着うたフル」といったデジタル配信の急拡大が、それを象徴していた。その潮流を象徴していたのが、青山テルマ feat. SoulJaの「そばにいるね」のヒットだ。
この曲は、2008年に着うたフルで200万ダウンロードを突破し、同年9月には「日本で最も売れたデジタル・ダウンロード・シングル(フルトラック)」としてギネス世界記録に認定された。
不況の中、人々は音楽などの娯楽に対する消費を控えるようになり、CD購入から、安価な配信コンテンツへと関心が移っていった。
一方、ベテラン勢の存在感は揺るがなかった。彼らはすでに固定ファン層を確立しており、経済の冷え込みにもかかわらず安定した売上を維持した。サザンオールスターズはデビュー30周年を迎え、「I AM YOUR SINGER」で活動休止前のフィナーレを飾った。「サザンがいったん終わる」という出来事は、時代そのものの節目として多くの人の記憶に残った。
Mr.Childrenの「HANABI」は普遍のメロディを響かせ、B’zは「BURN -フメツノフェイス-」を携えてツアーを敢行。ドリカム、中島みゆき、宇多田ヒカルらも完成度の高い作品を発表することでJ-POPの屋台骨をしっかりと支え、ライブ会場には変わらぬ熱気があった。
こうして、2008年の音楽シーンには二つの流れが交錯していた。ライブというリアルな空間で音楽の強度を証明するベテランたちと、デジタルの世界で新しい熱を生み出す若い世代。不況という逆風は皮肉にも、その世代交代を後押ししたと言えるかもしれない。
のちには、ベテラン勢も含めてJ-POP界全体がネット文化を軸に動きはじめるのだが、この年は音楽が「モノとして所有するもの」から「体験として共有するもの」へとかたちを変えていく——そんな流れの境となる年でもあった。
次回は、CD中心から配信中心へ移行する過渡期となった2007年のJ-POP界を探ってみたい。