2014年:CD中心・テレビ露出重視時代に垣間見えた予兆
2014年のJ-POP界で特徴的な動向としては、アイドル・グループの存在感が急速に拡大したことが挙げられる。AKB48「ラブラドール・レトリバー」、乃木坂46「気づいたら片想い」、嵐「Bittersweet」など、テレビやラジオへの露出に加え、握手会や特典イベント、限定盤販売などファンとの接点を強化したCD販売戦略によって、熱心なファンを中心に高い売上を記録した。
CDを購入することでイベントに参加できるという仕組みにより、売上は安定的に伸びた。さらに、ファンがイベント映像やパフォーマンス動画をSNSやYouTubeに投稿することで、テレビだけでは届かない層への認知拡大が進んだ。
この頃は、まだCDの売り上げがヒットの指針だったものの、ファン自身がネットを通じて情報を広めるという動きは、2015年以降、SNSやYouTubeの再生回数がヒットを左右する時代への布石となったことは確かだろう。
また、この年の大ヒット曲「Let It Go~ありのままで~」にも、ネット文化が大きく関係していた。映画「アナと雪の女王」を観た人々の感動がSNSで拡散し、YouTubeやニコニコ動画ではカバーや“歌ってみた”動画が次々と投稿された。それらを、子どもから大人までがスマホで共有し、二次創作やパロディも生まれたことで、この楽曲は世代とメディアを越えて浸透した。
しかし「Let It Go」は、カラオケや配信で人気があった一方、CD売上ではアイドル系に比べると控えめだった。AKB48などアイドルグループのシングルは握手券や特典付きで大量に売れ、オリコンチャートの上位を占めていたが、その売上の多くは熱心なファンの購買に支えられていたため、カラオケなど日常で歌われる曲とは必ずしも一致しなかった。
2014年は、CDで買われる曲と日常で親しまれる曲が必ずしも重ならない、新しいヒットの形が見え始めた年だったとも言えるだろう。そしてそれは、後のネット文化によるJ POP界の変革へとつながっていった。
次回は2013年にさかのぼり、ネット文化を発展させる原動力となったリスナーの意識変化について探っていきたい。